2022年 3月号 第147回「神話の中の「他界」①」
「他界」は気持ち次第で行き来することができる世界
前回まででご紹介した縄文時代や古墳時代のお墓の中から発見された副葬品を見ると、少なくとも支配者のレベルの人々の中には「死後の世界」があったのだろうという事実が確認できます。
ここからは、「古事記」「日本書紀」「風土記」「祝詞」「万葉集」などに出てくる神話的な「他界」つまり「あの世」について見てみましょう。
よく亡くなられた人の事を言うときに「あの方は他界されました」という他界です。
「他界」とは、現実の世界の「この世」「現世」とまったく異なる非日常的な理想郷や聖なる「あの世」「来世」「前世」の事で神や魂(霊魂)とも深くかかわっています。
しかし日本の他界は、この世と断絶した、はるか遠くの別世界だけではありません。注連縄を張り、気持ちを変えることで簡単に「他界」を作ることもでき、この世と往き来できる世界と考えられています。これはお墓にも通じる重要な特徴です。
神話には「高天原」、「常世の国・妣が国」、「黄泉の国」、「根の国」、「神奈備山」、「日の若宮」、「海宮(竜宮城)」など複数の他界が出てきます。
次回からは代表的な他界をご紹介していきます。
- 竜宮城:りゅうぐうじょう
- 海宮:わたつみ
- 神奈備山:かんなびのやま
- 黄泉の国:よみのくに
- 常世の国・妣が国:とこよのくに・ははがくに
- 高天原:たかまがはら
- 注連縄:しめなわ
- 万葉集:まんようしゅう
- 祝詞:のりと
- 風土記:ふどき
- 日本書紀:にほんしょき
- 古事記:こじき