2022年 4月号 第148回「神話の中の「他界」②」
天や海などに存在する様々な「他界」
神話に出てくる他界の代表的な物が「高天原」です。
「高天原」は一つの例外をのぞいて「死後の他界」ではありません。
地上にあるこの世の「中つ国」(豊葦原中津国)に対する天上界の「天つ国」(天津神の世界)で、天上他界と言われ、天照大神が治める神々の住む国です。
「常世国・妣が国」は、海のはるか彼方にある理想的な長寿の国と言われる海上他界です。
古事記には、神武天皇が海上を渡り「常世の国」へ行き、別の兄弟は海原に入って「妣の国」へ行った。という用例もあります。
「丹後国風土記」逸文では、浦島伝説の浦島が亀に乗っていった常世を「蓬山」といいます。これは中国の道教の影響を受けたもので、「神仙」が住む不老長生の楽土の事です。
「神奈備山」の神奈備とは、神が天降った神聖な山や森の事です。神奈備山は「万葉集」の「挽歌」に多くの用例が見られ、「風土記」や「祝詞」にもあり、山上他界・山中他界と言われています。
「死者は山へ帰る」とか「死霊は山へ帰る」という民俗が主流を占めるようになる重要な基盤となる他界です。
- 祝詞:のりと
- 挽歌:ばんか
- 天降:あまくだ
- 神奈備:かんなび
- 神奈備山:かんなびのやま
- 蓬山:とこよのくに
- 逸文:いつぶん
- 丹後国風土記:たんごのくにふどき
- 常世国・妣が国:とこよのくに・ははがくに
- 天照大御神:あまてらすおおみかみ
- 天津神:あまつかみ
- 天つ国:あまつくに
- 豊葦原中津国:とよあしはらなかつくに
- 中つ国:なかつくに
- 高天原:たかまがはら