2021年 12月号 第144回「日本人は死んだらどうなるの⑤」
時代が変われど日本人の故人を大切に想う気持ち
次に古墳時代のお墓を見ていきましょう。
古墳時代のお墓として現在遺跡として残っているものは、天皇や各地の豪族・支配者の墳墓だけで、一般庶民のお墓は考古学者やマスコミには、ほとんど取り上げられていません。
その結果「庶民はお墓を作らなかった」ような印象を受けますが、本当にそうなのでしょうか。
例えば奈良の元興寺極楽防や山形の立石寺などに残るおびただしい数の「木製五輪塔」や「宝篋印塔」の納骨器、あるいは高野山奥の院や滋賀県にある石塔寺など全国各地から出土する何十万基という小型「一石五輪塔」などは、学問的には「お墓」に分類されないかもしれませんが、これはれっきとした「お墓」であり、これらを合わせると、中世以降、優に数百万基の小型の「庶民のお墓」が今日まで残っていることになります。
一部の民俗学者は「日本人は死体はきたなく、こわいものと考え、お墓を作らず野山に捨てた」という説を唱えていますが、縄文・弥生時代まで「死者を大切にした」日本人が、突然お墓を作らなくなるはずはない。と私は考えます
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