2015年 12月号 第72回「浄土真宗とお墓⑤」
阿弥陀様のお浄土へ還る
浄土真宗が世間一般の習慣と違う点が多いのは、門徒さんが亡くなると、すべて「阿弥陀様のお浄土へ還る」という教えに基づいているからです。「ナムアミダブツ」ととなえる人は、阿弥陀様の力によって、死後すべて浄土に往生させてもらえますから、「あの世」や「六道輪廻」で苦しむ故人やご先祖様を、自力で追善し追福する必要がないのです。では、亡くなってすぐに「他力本願」で成仏できる浄土真宗の門徒さんには追善供養の必要が無いのでお墓は必要ないのでしょうか。親鸞聖人は、亡くなる前に「私が目を閉じたら、賀茂川に投げ入れて魚に与えよ」と言われました。(改邪鈔)しかし誰もその通りには出来ません。親鸞聖人は火葬にされ、末娘の覚信尼によって六角堂の「廟堂」が建てられました。やがて第三世覚如上人は、そこを本願寺としました。つまり本願寺は親鸞聖人のお墓から発展したお寺であり、ご聖人のご遺徳をしのぶ心が「お墓」となったのです。ちなみに真宗十派を合わせると日本一大きな教団ですから、お墓の数が日本一多いのも浄土真宗です。
- 廟堂:びょうどう
- 覚信尼:かくしんに
- 改邪鈔:がいじゃしょう
- 六道輪廻:ろくどうりんね
- 還る:かえる