2015年 1月号 第61回「なぜお墓は石でつくるの⑥」
日本の神話では、お墓をはさんで死者と生者が会話することの大切さを教えてくれています。
日本の神話では、お墓をはさんで死者と生者が会話することの大切さを教えてくれています。お墓に関して日本人は神代の昔から「石」に霊が宿ると考えてきました。だから神霊が宿ると言われる「磐座」を石で作ったりしました。日本には八百万の神々がいますから、自然界のあらゆるものに霊が宿っており、なかでも石には特別の霊力があると思われたのです。たとえば、「古事記」にはスサノヲの命が天照大神に身の潔白を明かす「誓約」のとき、天照大神の八尺の勾玉に息を吹きかけると、五人の男神が生まれた話があります。つまり勾玉は霊力のある石だったのです。大化二年に出された「薄葬令」では「庶民は土に埋葬せよ」と有りましたが、庶民も河原の丸い石(枕石)を霊が宿る寄り代として埋葬地に置いていました。日本人が古代からお墓を死者の霊魂が宿る寄り代の「石」で作るのは、「石」の霊力を信じる伝統があったのです。それは一朝一夕に失われるものではありません。それが二千年の伝統の重みです。「お墓=石」という日本人の心情にはこうした神話と歴史の背景があるのです。
- 寄り代:よりしろ
- 枕石:まくらいし
- 薄葬令:はくそうれい
- 勾玉:まがたま
- 八尺:やさか
- 誓約:うけい
- 天照大神:あまてらすおおみかみ
- スサノヲの命:スサノヲのみこと
- 八百万:やおよろず
- 磐座:いわくら
- 神代:かみよ