2012年 9月号 第34回「写経の話⑤」
インドで広まったお墓にお経を写して納める(埋経)の風習
インドで広まったお墓にお経を写して納める(埋経)の風習は、やがて中国へ伝わりその後日本へと伝わりました。
日本では平安時代に始まる「経塚」として独自の信仰が生まれています。
経塚とは、お教や仏像・鏡などを経筒や経壺に入れて霊山と言われる山のお堂や石塔の下などに埋めたものです。納められるお経は「法華経」(如法経とも言う)が最も多く、次に「弥勒下生経」「阿弥陀経」などがあります。
現在、全国に五百六十余りの経塚がわかっています。平安時代に経塚を日本に伝えた、天台宗三世・円仁(慈覚大師・八六四年没)が遺言して作らせた比叡山・横川の如法堂や関白・藤原道長が吉野山の金峰山寺に埋めた金銅製の「経筒」(国宝)はその代表的なものです。
藤原道長の経筒には、「阿弥陀経は極楽往生のため、弥勒経は生死の罪を除く・・・」(銘文)
とあり、円仁の経塚には「願わくばこの功徳を以て、普く一切に及ぼし、我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜんことを」(如法堂筒記)と願文にあります。
- 成ぜん:じょうぜん
- 衆生:しゅじょう
- 及ぼし:およぼし
- 一切:いっさい
- 普く:あまねく
- 以て:もって
- 功徳:くどく
- 願わくば:ねがわくば
- 銘文:めいぶん
- 生死:しょうじ
- 金峰山寺:きんぷせんじ
- 関白:かんぱく
- 如法堂:にょほうどう
- 横川:よかわ
- 比叡山:ひえいざん
- 慈覚大師:じかくだいし
- 円仁:えんにん
- 阿弥陀経:あみだきょう
- 弥勒下生経:みろくげしょうきょう
- 如法経:にょほうきょう
- 経壺:きょうつぼ
- 経筒:きょうづつ
- 経塚:きょうづか