2012年 7月号 第32回「写経の話③」
写経をすると、はかりしれない功徳がある
写経をすると、はかりしれない功徳があり、その功徳(善い行い)は「貯金」のように貯めておくことが出来るのです。そのうえ自分で貯めた功徳は、貯金と同じように、亡くなった人の幸せ(冥福)の為や、他の人にも振り向ける事ができます。
他の人に融資が出来るのです。これは大乗仏教を支える重要な「回向」の考えです。
写経の当初の目的は記録でした。中国では後漢の頃(二五~二二〇年)に始まり、日本では天武天皇の白鳳二年(六七三年)に「始めて一切経を川原寺に写したまふ」(『日本書紀』第二十九)とあり、飛鳥でお教の全集(一切経)が書き写されました。後に写経司(役職)や写経所(役所)が置かれ国家事業になって行きます。
それと同時に、記録とは別に「功徳」を積み、亡き人の生前の罪を無くすこと(懺悔滅罪)などを願って写経が盛んに行われました。
写経の末尾に「願文」(願い事)や「為書」(目的)を書きますが、奈良時代のお寺や正倉院に残る写経は、ほとんどが「過去七世の父母」の為の「追善」とか「滅罪」を込めた「願文」が書かれています。
- 懺悔滅罪:ざんげめつざい
- 大乗仏教:だいじょうぶっきょう
- 天武天皇:てんむてんのう
- 亡くなった:なくなった
- 父母:ぶも
- 正倉院:しょうそういん
- 願文:がんもん
- 末尾:まつび
- 写経司:しゃきょうし
- 飛鳥:あすか
- 滅罪:めつざい
- 川原寺:かわらでら
- 一切経:いっさいきょう
- 白鳳:はくほう
- 追善:ついぜん
- 回向:えこう
- 融資:ゆうし
- 冥福:めいふく
- 為書:ためがき
- 貯めて:ためて
- 善い:よい
- 功徳:くどく